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執筆者の写真Murai Toshio

Ⅴ7が…いない!?


ことポップス、とくにメジャーキーのポップスにおいては、あからさまなⅤ7(CメジャーキーならG7)が使われなくなってきています。

Ⅴ7がくるべきタイミングで、かなりの確率で、属音ボトムに乗っかった「Ⅱm7」や「Ⅳ」が使われます。Cメジャーキーであれば「Dm7 on G」や「F on G」です。つまり「Ⅴ7sus4」的なコードが多用されています。


マイナーキーやセカンダリードミナントでは、さほどこのような傾向はありませんが、メジャーキーのポップスではかなりの傾向です。

これは日常会話の傾向とリンクしているように感じます。それは「明言を避ける」ということです。

音楽理論において、機能和声の根幹は「ドミナントからトニックへの解決」、つまり「不協和から協和への明確な着地」ですが、これは日常会話に例えれば「完全にズバッと言いきる」イメージです。

いつの頃からか、日常会話で「ズバッと言いきる」ことを回避する傾向が現れました。昭和の頃でしたら「○○だぞ~みたいな~」みたいな言い回し。近年では「よろしかったでしょうか?」「こちら○○になります」「あ、大丈夫です(拒否の意味で)」などなど。

とにかくソフトランディングな昨今、ズバッとした解決感は時流に合わないのかもしれません。

そこで多用されるのが…ルート進行こそ「属音→主音」というドミナントモーションですが、その上に乗っている和音「Ⅱm7」や「Ⅳ」はサブドミナント。実質的には「サブドミナント→トニック」というソフトランディングです。

もはやドミナント機能の「トライトーンの解決」のようなズバッとした言い回しは、言いたくも聞きたくもないぞ…みたいな。

◇「G7→C」的な会話

「コーヒー飲みますか?」「あ、いりません。」

◇「Dm7 on G → C」「F on G → C」的な会話

「コーヒーのほうは?」「あ、大丈夫です。」

歌は世につれ、世は歌につれ

といったところでしょうか…。

おあとがよろしいようで。

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